短編

幻洛と伊丹の温泉旅行(R18)

【登場人物】
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*CP*
幻洛×伊丹(BL)※R18

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神無月。
その日、伊丹は万華鏡神社の広場で色付いた落ち葉の掃き掃除をしていた。

「秋の空気は心地良いですね…。」
ひんやりとした風に頬を擽られながら、伊丹は季節の変化を堪能していた。
「よお、伊丹。」
聞き慣れた声に振り向くと、そこには万華鏡村の巡回から帰ってきた幻洛の姿があった。

「幻洛さん…。こんな時間に戻ってくるとは珍しいですね。」
「これを伊丹に渡したくてな。」
「?」
どこか嬉しそうにしながら、幻洛は懐から一枚の小さな紙を取り出した。
その紙には、万華鏡村から少し離れたとある村の、とある旅館の宿泊案内が記載されていた。

「宿泊券?一体どうしたんですか?これ…。」
突然の贈り物に、伊丹は頭に疑問符を浮かべる。
「巡回先の商店街で福引きをやってな、コイツが当たったというわけだ。」
「…巡回中に福引きなんてやったんですか…。」
「まあまあ。それはそうと、どうだ?たまには俺と二人で羽を伸ばしに行かないか?」
そう言うと、幻洛は懐からもう一枚同じ宿泊券を伊丹に見せつけた。

子供のようにワクワクしながら誘ってくる幻洛を前に、伊丹の気持ちは揺らぐ。
「…行きたい気持ちは山々ですが、僕が神社を留守にするなど…。」
「いいんじゃないかしら?」
「!」
背後から聞こえる賛同の声に、伊丹は思わず振り向いた。
そこには伊丹の愛弟子、ふゆはの姿があった。

「ふゆはさん、いつの間に…。」
伊丹が軽くため息を吐くと、ふゆはは伺うように顔を覗かせた。
「伊丹、ここ最近仕事で篭りっぱなしだったでしょう?久しぶりに、気分転換しに行ってもいいんじゃないかしら。」

ふゆはの言う通り、伊丹はここ最近神社の仕事が立て込んでおり、しばらく外出が出来なかった。
今は仕事も一区切り付き、伊丹自身も出かけたいという気持ちはあったが、自分の神社を丸一日空けるという不安に煽られ、決断を下すことが出来なかった。

「大丈夫よ、伊丹の式神たちは私が見ておくから。」
そう言うふゆはの目は、もはや弟子になりたての頃とは想像がつかないほど自信に溢れていた。
今の彼女であれば、式神たちと共にこの万華鏡神社を任せられるかもしれない。
伊丹はそう心の中で思った。

「さすがふゆはだな、話が早い。」
「…伊丹のためを思って言っただけよ。」
頭を撫でる幻洛に、子供扱いしないでと言わんばかりにふゆははツンとそっぽを向いた。
まるでどこかの師匠とそっくりだな、と幻洛は静かに笑った。

「そうですか…。では、ふゆはさんのお言葉に甘えさせていただきましょうか。」
愛弟子の気遣いを蔑ろにできるはずもなく、伊丹は幻洛と共に一時の休暇を頂くことにした。

まるで籠から放たれた鳥のように、爽やかな秋風が伊丹の背を優しく後押しした。

………

旅が決まった翌日、ふゆは、ナギ、ツヅリ、裂に見送られながら、幻洛と伊丹は万華鏡村を後にした。
目的の村までは少しばかり距離があるが、決して歩いて苦になるものではなかった。

手荷物は軽めで、幻洛はいつもの薙刀を担ぎながら伊丹と新しい風景を満喫した。
伊丹と二人きりの時間、それが幻洛にとって何よりの至福だった。
一方、伊丹も幻洛との旅を心から満喫していた。
紅葉であれば万華鏡村でも見れるが、幻洛と眺める新しい土地の紅葉は、まるで別物のように色鮮やかなものだった。

旅館に着き、絶品の夕食を堪能した幻洛と伊丹は、静かな夜を共に過ごしていた。

「良い景色ですね…。」
伊丹は縁側に座り、灯籠の光が煌めく立派な庭園を眺めていた。
「そうだな。…万華鏡村も悪くないが、この村もなかなか良いものだな。」
傍らに座る幻洛は、ひっそりと伊丹に身を寄せていた。

「さて、そろそろ風呂にでも行くか。」
「!」
そう言いながら立ち上がる幻洛に、伊丹はハッと我に帰る。

「…すみません幻洛さん、僕は…」
伊丹の身体には、未だ数多くの包帯が巻かれている。
勿論、身体の包帯は外せるが、かつて身体を蝕んでいた呪いの痕跡を幻洛以外の者に見られるのが嫌だった。
何より、右目に巻かれた包帯は未だ恐怖心により外すことが出来ないため、そんな状態で公共の風呂に入るなど到底無理な話だった。

「貸し切り風呂に決まっているだろ?伊達に伊丹の伴侶をやっているわけではないぞ。」
「…!」
その言葉に、伊丹の心は高鳴った。
まさか貸し切りを取っていたなど、伊丹は思いもしなかった。

本当に、幻洛という混血の覚はどこまでも愛おしく、尊い妖怪だ。

伊丹は高鳴る心の臓を落ち着かせながら、幻洛の後をついて行った。

………

「…貸し切りだからってそんなに見ないで下さい…。」
「不可抗力だな。」
渾々と湧き出る温かな湯が、露天風呂の水面をゆらゆらと揺らす。
結局、伊丹は全ての包帯をしたまま幻洛と湯に浸かることにしたものの、先程から湯以上の熱い視線が降り注がれ落ち着くことが出来なかった。

「…なあ、伊丹…。」
ぐい、と幻洛に腕を回され、伊丹は思わず息を呑んだ。
「ちょっと、近いですってば…!」
「今更言うか。」
「ここはウチの風呂じゃないんですよ。」
なんとか押し返そうとするものの、力で幻洛に勝てないのは言うまでもなかった。
せめてもの抵抗で、伊丹はプイッと顔を逸らす。

「フッ…ウチの風呂だったら大人しく喰われるのにな。」
「…そういうことを言っているんじゃありません。」
ニヤニヤとからかう幻洛に、伊丹はムッと反論する。

今日までの出来事もあり、少しばかり流されそうになっていた伊丹は、密かに焦りを感じていた。

………

浴衣に着替え部屋に戻ると、立派な月が窓先の庭園を照らしていた。
「中秋の名月、ですね…。」
「…。」
月明かりに照らされながら庭園を眺めている伊丹を、幻洛は傍らでじっと見つめていた。
「…今度は何ですか…。」
「月よりも伊丹に見蕩れていてな。」
呆れたように、伊丹はため息を吐く。
「よくもまあそういうことが言えますね…。」
「本心だからな。」
「…。」
幻洛の”本心”という言葉に、伊丹は返す言葉が見つからなかった。

幻洛が伊丹に伝える言葉は、本当に心で思っている事ということは伊丹自身も理解している。
しかし、改めて幻洛が本心で言葉を伝えている旨を聞かされると、一昔前の、幻洛と伊丹が結ばれる前の出来事が蘇り、伊丹は愛おしさで心が締め付けられるのだった。

「っ、ちょっと…、」
「ああ、伊丹は月よりも綺麗だな…。」
腰を抱き寄せられ、背後から首筋にちゅ、と口付けを落とす幻洛に、伊丹は身体を強張らせた。

「なっ…!ん、…っ、幻洛さん…、」
「欲情した…、否、正確にはそれ以前から伊丹に欲情しているな…。」
「何、言ってるんですか…。」
言いながらも、幻洛は伊丹の首筋に口付けるのを止めようとはしなかった。
徐々に乱されていく浴衣に、伊丹は襟元を手で押さえて抵抗する。

「…も、う…いくら離れの部屋だからって…、こんなところで非常識です…。」
「…そうだな、なら、コレはどうしたらいい?」
「っ…!」
幻洛は半ば強引に伊丹の片手を奪う。
奪われた片手に熱い塊を感じた伊丹は、状況を理解すると同時に身体の熱がカッと上がった。

「なあ、伊丹…、お前を抱きたくて仕方がないんだが…、どうしたらいい…?」
「そん、な…、言われても…。」
ぐいぐいと熱く高ぶる雄を押しつけられ、伊丹は羞恥で口籠る。
「…口でしてくれるか…?」
「え、…!」
「抱かなければいいんだろ?」
「そ、…ぅ…。」
恥ずかしそうに俯く伊丹を導くように、幻洛は低く囁いた。

もはや後戻りが出来ないこの状況に、決断力の鈍った伊丹はただ時の流れに身を任せることしか出来なかった。

………

「はあ…、出合茶屋でもないのにこんなことをするなんて…あまりにも不埒です…。」
「そうだな、次はそういう所に行こうな。」
ちゃぶ台の上に座り浴衣の前を解いた幻洛は、股の間に座らせた伊丹の狐耳を優しく撫でていた。
「…そういうことを言っているんじゃないんですけれど…。」
頭上から降りてくる重低音の声を心地よく感じつつも、伊丹は不服そうな表情で幻洛の下着を解いた。

「う、わ…」
ぶるん、と勢いよく飛び出した雄の塊に、伊丹は思わず息を呑んだ。
はち切れんばかりに太く反り返ったソレは、血管を浮かべながら伊丹の奉仕を今か今かと待ちわびていた。
「…伊丹…。」
待ちきれないと言わんばかりに幻洛は軽く息を乱しながら、自らのそそり勃つ雄を伊丹の頬にぐい、と押し付ける。
「ん、…もう、仕方のない幻洛さんなんですから…。」
平静を装いながら、伊丹は幻洛の熱く硬い雄を優しく撫で摩る。
ドクドクと脈打つ剛直に、自らの下腹部がじゅわりと濡れるのを感じた。

「は…ふ、」
ぺろ、ちゅ、と控えめな音を立てながら、伊丹は優しく奉仕する。
もはや咥え込むことも困難なほど大きく勃ち上がった幻洛の雄に、伊丹は懸命に根元から先端へ舌を這わせた。
「っ、…く…」
温かく柔らかな伊丹の舌に翻弄されるように、雄の玉がクンと跳ね上がる。
既に幻洛の理性は限界に近かった。

普段、食事をするときは決して音を立てず、小分けにしながら上品に口元へ食べ物を運ぶ伊丹。
その伊丹が、今はちゅぱちゅぱと控えめな音を立て、口元を汚しながら必死に雄にしゃぶりついている。

そんな伊丹の姿に、幻洛は腰にゾクゾクとした電撃が走るのを感じた。
「はっ…、くそ…」
「わ、…!」
幻洛は雄に触れる伊丹の片手ごと掴み、自らの肥大化した雄を本能のまま擦り上げる。
まるで幻洛の自慰を見ているような光景に、伊丹は呆気に取られていた。

「ぐ、っ…伊丹っ…出す、ぞ…」
「!」
ビクビクッ、と一際大きく雄が震え上がる。
ズリ、と先端を伊丹の頬に擦り付けると、ドピュ、と勢いよく幻洛の欲が爆発した。
「うわっ…!」
白濁とした幻洛の熱い精液を顔に受け、伊丹は思わずたじろいだ。
「は、は…っ、すまん…、」
「ん…、いえ…」
顔や髪に付着した熱くねっとりとした欲。
むわっと漂う雄の臭い。
伊丹の本能は完全に支配され、放置されている下腹部が寂しそうに疼いていた。

「顔、汚してしまったな。」
「あ、…」
達してもなお硬く聳え勃つ幻洛の雄を離され、伊丹はどこか物足りなさを感じていた。
そんな伊丹を知ってか知らずか、幻洛は予め用意しておいた濡らした手拭いで、丁寧に伊丹の頭や顔を拭っていく。
「付き合ってもらって悪かったな、これで大人しく寝れそうだ。」
「…そうです、か…。」
そそくさに身なりを直し、幻洛は布団へと戻っていく。
「…。」
ぼんやりとした思考のまま、伊丹も釣られるように幻洛の隣の布団へと戻っていった。

「…おやすみ、伊丹。」
「…。」
個別の布団であるにも関わらず、幻洛は伊丹の布団へ潜り込み、背中から愛おしい者の身体へ片腕を回した。
いつも屋敷で幻洛が伊丹と寝床を共にする際の形姿だ。

背後から密着され、腰に回された逞ましい腕に、伊丹の身体がずくずくと疼きを増していく。
「………、幻洛さん…。」
「ん?」
返答する重低音の声が身体に響き、伊丹は名を呼んだことを後悔しながら敷布を掴む。
「…どうした。」
「っ…」
のそり、と幻洛が身動き、伊丹は後頭部に彼の吐息を感じた。
これ以上余計なことはしないで、と伊丹は願うも、下腹部の熱は高まるばかりだった。

「…身体、熱いな…。」
「…!」
浴衣越しに下腹部をなぞられ、散々堪えてきた伊丹の理性はぐらりと崩れ落ちた。
同時に、小火のように燻っていた身体の熱が一気に燃え上がる。

「幻洛さんが、悪いんですから…っ」
「!」
伊丹は振り向き、片手を宙に振り上げる。
おそらく妖術で結界を張ったのだろう、幻洛は部屋の空気がピシッと変わるのを感じた。

伊丹はそのまま密着していた幻洛の上にのしかかると、切ない表情で唇を奪った。
「伊、…!」
ある程度予想していたことだが、まさか伊丹から口付けをしてくるとは思っておらず、幻洛は目を見開く。
唇にぺろりと当たる伊丹の舌の感触に、幻洛の中で再び雄の欲望が熱く滾った。
「ん、はっ…」
「…ふ、積極的だな…」
「…幻洛さんが悪いんです…っ」
「フッ…さっきも聞いたぞ。」
まるでこの状況を待っていたかのように、幻洛はニヤリと伊丹を見上げた。

「は、んぅ…」
伊丹は生理的な涙を目尻に溜め、寝そべる幻洛の腰の上に跨り、欲しがるように下腹部をスリスリと擦り付ける。
「ああ…、最高の眺めだな…。」
刺激的な光景に、幻洛は獣のように金眼をギラギラと輝かせた。

「んっ…、あ、…」
「っは、そうがっつくな…ちゃんと挿れてやる…」
幻洛は起き上がると、腰の上に跨らせたままの伊丹の下着を解き、股をグイと開かせる。
「ふ、随分と濡れてるな…、そんなに期待していたのか?」
伊丹の雄に隠れるようにして熱を放つ雌の秘所は、散々放置された寂しさによりぐっしょりと愛液に濡れ、今もなお物欲しそうにヒクヒクと疼いていた。

幻洛はニヤリと妖しく笑みを浮かべると、二度目の勃起とは思えないほどギチギチに腫れ上がった自身の雄を伊丹の雌の中にグッと埋める。
「っ!あ、んんっ…幻洛、さ…」
「く、…キツいな…」
待ち望んだ幻洛の雄に、伊丹の雌はすんなりと奥へ奥へと幻洛を誘い込む。
キュウキュウとうねりながら熱く締め付ける伊丹の肉壁に、幻洛は先の口腔よりも強い刺激が腰に走るのを感じた。

熱く硬い雄を全て埋め込むと、幻洛は伊丹を抱え込み、はだけた浴衣から構ってほしそうにピンと主張する胸の先端にしゃぶりついた。
「ふゃ、ぅ…」
「伊丹の胸の先はいつも敏感だな…」
「ひぅ、んっ…いちいち言わなくて、いいですからっ…!」
左胸はちゅうちゅうと吸い上げられ、右胸は雄々しい手で揉みしだかれながら、伊丹は衝動的に幻洛の頭を優しく撫でる。
まるで母性が目覚めたかのように、伊丹は不思議と夢心地になっていた。

「ひ、ぁっ!」
突然、幻洛に下から突き上げられた伊丹は、まるで尻尾を掴まれた狐のように高く鳴いた。
「あ、そんなっ…急に、動かないで下さいっ…!」
「ん?こうされるのが好きなんだろ?」
これまで何度も伊丹を抱いてきた幻洛は、的確に伊丹の弱い部分を攻め上げると金眼をギラつかせながらニヤリと笑みを見せた。
「ぁ、…!」
獲物を喰らう完全な雄と化した幻洛の姿に、伊丹は繋がったままの奥底が軽く痙攣するのを感じた。

「あっ、あぅ…げんら、さっ…」
柔らかな胸を弄られながら繋がったままの下腹部をズンズンと雄に突き上げられ、伊丹は涙を零しながら必死に幻洛にしがみつく。
「んん、っ…げんらくさん…、すき、っすきです…、」
「っ…伊丹…ッ」
甘えるようにスリスリと太ももを擦り付けてくる伊丹に、幻洛は一層身体の熱が上がった。
「は、っ…俺も伊丹が好きだぞ…、愛してる…、伊丹…」
ふうふうと息を荒げ、幻洛は伊丹の首筋に顔を埋めながら次第に腰の動きを速めていく。

ぬちゅ、ぱちゅん、と粘着質な音が、月明かりに照らされた薄暗い部屋の隅々に鳴り響く。

「や、んん…っ!ぼく、もう…だめ、っイっちゃうぅ…ん…っ」
幻洛の雄を咥える最奥が痙攣し、この後押し寄せてくる快楽の波に耐えるように伊丹は幻洛にしがみついた。
「はっ、は、…ああ、俺も、中出すぞ…ッ」
幻洛もまた一層強く伊丹を抱え込み、うねりながらジワジワと締め付けを増す伊丹の膣に本能のまま腰を打ち付けた。

「うぁッ…やうぅ…ッ!」
ビクンッ、と一際大きく腰を跳ね上げ、きゅうぅぅ、と中を伸縮させながら伊丹は達する。
「ん、ぐ…ッ…!」
幻洛は一度目の射精よりもはるかに強い快感にギリ、と奥歯を食いしばりながら、ドビュッ、ドピュ、と伊丹の最奥に大量の欲望を撃ち放った。

息を乱しながら、二人は暫く繋がったまま快楽の余韻に浸った。

のそりと幻洛が動き、じゅぽんっと雄の杭を伊丹から引き抜くと、白濁とした欲が快感に震える雄と雌の間で名残惜しそうに糸を引いていた。

………

「…幻洛さんが悪いんです…。」
「フッ…散々聞いたぞ…。」
熱く蕩けるような情交に浸った翌朝。
伊丹は布団にスッポリと埋まりながら、昨晩の出来事を恥じるように幻洛に悪態をついていた。
そんな伊丹に面白おかしく笑いながら、幻洛は布団ごと伊丹に抱きついた。
「そう言う伊丹こそ、まんざらでもない様子だったがな。」
「…もう、知らないです…。」
これ以上余計なことを言わないで下さい、と言わんばかりに、伊丹は更に強く布団に包まった。

相変わらず素直じゃない伊丹を愛おしそうに見下ろしながら、幻洛は小さく笑った。
「俺はまた、こうやって伊丹と二人きりで出かけたいものだな…。」
「…。」
その言葉に、伊丹は反論することが出来なかった。
また二人きりで出かけたいという気持ちは、嘘偽りなく伊丹の中にもある思いだったからだ。

「…不埒なことをしないのであれば、考えておきますよ…。」
「!」
布団からひょこっと顔だけ出した伊丹は、幻洛と視線を合わせず独り言のように呟いた。

「俺の嫁は今日も可愛いなあ。」
幻洛は愛おしさに口元を緩ませながら、嬉しそうに再び伊丹を抱きしめる。

素直じゃない自分より、純粋な幻洛さんの方が可愛いのに。
と、伊丹も心の中で呟いた。

心ゆくまで伊丹を堪能した幻洛は、もぞもぞと身体を起こし被さる前髪をグッと掻き上げる。
「帰る前に、皆への土産を買わないとな。」
「…そうですね。」
ようやく解放された伊丹は、ホッとするかのようにため息を吐いた。

この旅の終わりに、少しばかりの名残惜しさを感じながら。

………

「お帰りなさい、伊丹。幻洛も。」
「ただいま、ふゆはさん。神社の留守番、ありがとうございました。」
屋敷へ戻ると、真っ先にふゆはが出迎えに現れた。
「ただいま、ほら、土産だぞふゆは。」
「わ、和菓子…!あ、ありがとう…。」
幻洛から土産入りの風呂敷を受け取ると、ふゆはは嬉しさに目を輝かせていた。

「お帰り、お二人さん。」
「ツヅリ、ほら、お土産の和菓子だって…!」
「おやおや、これはまたずいぶんと豪勢な土産だな。」
ふゆはの後からツヅリも現れ、その量に驚きつつも静かに土産を喜んだ。

「少しは気分転換できたかい?」
ツヅリはフッと笑みを浮かべながら幻洛と伊丹を見上げた。
「ああ、最高なくらいだな。…な?伊丹。」
「…そうですね。」
少々意味深な返答に、伊丹は困りつつも肯定した。

嬉しそうにしながら土産と共に居間へ戻るふゆはとツヅリを追うように、幻洛と伊丹も歩み出す。
「…幻洛さんも、僕を連れ出してくれてありがとうございました。また幻洛さんとの思い出が増えて、…嬉しいです。」
「!」
遠慮がちにも笑みを向ける伊丹に、幻洛は不意を突かれたように心が高鳴った。
「フッ…、それは俺も同じだ。…ありがとうな、伊丹。」
幻洛もまた笑みを向け、伊丹に身体を寄せながら歩いていった。

この幸せな思い出を分かち合うように。


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